暴かれた真実２ー⑤最高裁で解雇撤回を
（動労千葉争議団座談会） 髙石正博 中村俊六郎 中村 仁
分割・民営化との闘い 間違ってなかった
国鉄分割・民営化が強行された１９８７年４月、動労千葉組合員１２人は採用差別によって国鉄清算事業団に送られ、１９９０年４月に国鉄清算事業団から整理解雇されました。「解雇撤回・ＪＲ復帰」の原則を掲げて２７年闘ってきました。動労千葉争議団の3 人に最高裁の闘いに向けて決意と展望を語ってもらいました。
裁判所に不当労働行為を認めさせた
――９・25判決の持っている意味についてお願いします。
髙石正博 東京高裁・難波裁判長は「白石事件＊」後、３回目の弁論で結審を強行したので危機感をもって臨みました。こうした中で「10万筆署名」に向かって行く過程で１０４７名闘争を勝利させようという気持ちがバーッと出てきたと思う。
そういう意味で９・25判決を見てみれば、「解雇撤回」を拒否したという点では反動判決だけど、一審判決が認定した不当労働行為を取り消させなかった。われわれの闘いがそこへ押し込んだというのが９・25判決の意味だと思うね。
＊白石事件 「採用差別がなければＪＲ東日本に採用されたはず」とする判決を出した東京地裁の白石裁判長が突如、総括判事を座を追われ、左遷された。陪席の裁判官も青森へ左遷となった。
中村仁 判決という点では全面勝利ではない。しかし、採用名簿から外したことを不当労働行為だと認めたという点ではこれまでにない大きな成果。一方でこの判決は、金を払えばクビを切っても良いという判決で、絶対に許せない。
中村俊六郎 東京高裁で不当労働行為を認めさせた点では大きな成果だと思います。特に署名運動がこれまで考えられない広範な支持と連帯を生んだという点では、国鉄闘争のもっている位置は計り知れないと感じたね。
髙石 すでに新たな10万筆署名運動が始まったけど、前回の署名とは違う雰囲気がある。９・25判決のことを話すと相手が逆に聞いてくる状況もあってビックリした。
沖縄では初めて組合も訪問して訴えたけど、「他の解雇撤回闘争では最高裁でも闘うんだという意気込みは見られないけど動労千葉の場合はその闘いができているんですか」という声が結構聞こえた。
９・25判決は、解雇撤回闘争はキチンとやれば勝てるという展望を与えたと思う。
矛盾に満ちた９・25高裁判決
――９・25判決は、「名簿に記載されたとしても、ＪＲが採用したとは限らない」として解雇撤回を拒否しました。
中村仁 一般的な偽装倒産だったら成立するかもしれない。だけど、国鉄分割・民営化は、法律（改革法）を作り、採用人数を決め、国鉄職員の中から採用するという形をとり、国鉄が採用候補者名簿を作成し、ＪＲ会社は名簿を受け取り、すべて採用する仕組みだったわけでしょ。だから９・25判決は、国鉄改革法から見ても矛盾だらけの判決だね。
結局、「解雇撤回」判決を出すわけにはいかないから、司法や権力の側とすれば、矛盾を抱えたまま突き進まざるを得ないわけで、彼らの最大の弱点だと思います。
――井手（ＪＲ西日本会長）、葛西（ＪＲ東海会長）と設立委員会の斎藤委員長（経団連会長）が頻繁に会い、不採用基準について斉藤委員長が国鉄に対して案を作ることを指示し、それで井手や葛西が基準を作ったことが明らかになりました。
髙石 「井手文書」を見ると、９・25判決の中で「名簿に載ったとしても採用されたとは限らない」となっていたことが、今の部分から来ていることがよく分かるよね。だから真実を明らかにするには葛西を呼んで調べるしかない。それじゃないと、国鉄分割・民営化の真実が明らかにならないよね。
俺たちは、国家的不当労働行為を追及しているわけで、どうしてこうなったのかが分からなかったら決着のつけようがない。葛西を絶対に引っ張り出して、俺たちを排除した経緯や鉄道労連＝ＪＲ総連との関係を明らかにしたいね。そうなれば、情勢は一気に変わると思う。
中村仁 最高裁でいずれ判断が出るわけですけど、どっちに転んでも闘いは続く。だから、裁判の結果だけが最終目的ではない。解雇撤回闘争や国鉄闘争全国運動を闘い続けていく中で全国の労働組合や労働者・市民との連帯の輪を広げていくことに本当の意味があると思う。全金本山労組だって裁判は負けたけど最終的には職場に復帰した。
中村俊 そういう意味では動労千葉が１０４７名解雇撤回闘争と外注化粉砕闘争を一体で闘いぬいていることの意味は本当に大きいと思います。
髙石 これまでは国鉄分割・民営化の「成功」だけが取り上げられていたけど、ＪＲ北海道の安全の崩壊や貨物や四国などの経営破綻の問題も含めて、分割・民営化が完全に破綻していることが表面に出るようになってきた。俺たちが１０４７名闘争を曲げずに闘い続けてきたからこそ、敵の側に矛盾が出てきたということ。そういう点で今年は、われわれの側が攻勢をかける年だと思いますね。
北海道の問題で言えば、会社が悪いのは当たり前だけど、何もやらなかった労働組合の責任が一番大きいと思う。だから僕は、動労千葉が反合・運転保安闘争を闘っているから千葉では大きな事故がないことをいつも訴えてきた。
最高裁で解雇撤回の判決かちとる
――１０４７名闘争勝利に向けた決意をお願いします。
髙石 国鉄分割・民営化によって何が起きたのかをハッキリさせて訴えることが重要だと思います。そういう意味では攻め時じゃないか。 尼崎事故、羽越線事故、伯備線事故、そして北海道での安全の崩壊、貨物の経営破綻と賃下げ……すべてが分割・民営化の問題だし、外注化によって安全が崩壊している問題でしょう。しかも、会社はなんの総括もしてない。やっぱり分割・民営化は間違っていたことを訴えていくことが最高裁での勝利につながっていくと思うね。
原点に戻って、国鉄分割・民営化が正しいのか正しくないのかをハッキリさせていくのも、われわれの運動の使命だと思ってます。
中村仁 最高裁闘争では、完全勝利をめざして全力で闘います。その上で、いかなる判断が出ようが勝利まで突き進む決意で闘いぬきたい。動労千葉という素晴らしい組合の一員として、これからも解雇撤回と職場の闘いを一緒にやりたい。
この闘いと一体で、外注化された業務と出向者をＪＲに戻す闘い、ライフサイクルでは青年部の北嶋君を運転士に奪還する闘い、さらに駅に強制配転されている仲間を取り戻すために闘いたいと思います。
中村俊 基本は、動労千葉の闘いの輪を広げることだと思う。１０４７名闘争は、国鉄分割・民営化反対闘争だけど、民営化と外注化、そして非正規職化との闘いは、世界的にも労働者の共通の闘いじゃないですか。
韓国では、民営化に反対して鉄道労働者が長期間のストを闘っている。ああいう闘いを見ると、動労千葉のやってきたことは絶対に間違ってなかったと確信できますね。こうした闘いを組織することができれば、組織拡大も実現すると思います。
（『日刊・動労千葉』２０１４年1月9日付７６３５号より）
