暴かれた真実2ーB
 
東京高裁 不当労働行為を認定

「国鉄分割・民営化に反対する…労働組合に所属していること自体を理由として、差別して不利益に取り扱う目的、動機(不当労働行為意思)の下に、本件名簿不記載基準を策定し、…JR東日本の採用候補者名簿に記載しなかったものと推認するのが相当」

「JR東日本は、国鉄とは別個独立の新法人であり…いかなる者を雇い入れるか…自由にこれを決定することができる以上、採用候補者名簿に記載されることが、直ちに同社に採用されることを意味するものではない」

動労千葉鉄建公団訴訟(解雇撤回・原職復帰裁判)東京高裁判決(2013年9月25日)より

解雇撤回の勝利を手にするまで私たちは闘い続けます

田中康宏(動労千葉委員長)

 国鉄改革の真実は一点の曇りもなく明らかになった。「解雇撤回・JR復帰」判決を勝ち取れれば、解雇も不当労働行為もやり放題のこの社会のあり方そのものへの反撃の手がかりをつかめる。

 国鉄闘争はすでに30年近くに及ぶ長い長い闘いになりました。この間、本当に多くの皆さんから暖かいご支援を頂いたことに心から感謝申し上げます。
 27年前に強行された国鉄分割・民営化は、戦後最大の労組破壊攻撃であり、大量首切り攻撃でした。民営化までのわずか6年の間に20万人の国鉄労働者が職場を追われたのです。 自殺者200人。民営化強行の際、JRへの「採用」を拒否された者7600人。3年間の「雇用対策期間」を経て1990年に「二度目の不当解雇」をされた者1047人。

 分割・民営化反対スト 

「飛んで火に入る夏の虫」
 1985年の秋、動労千葉がストライキに立ち上がることを決断したとき、組合つぶしのために送り込まれてきたばかりの千葉鉄道管理局長が言い放った言葉を今でも忘れません。
 われわれは、この攻撃と真正面から闘いぬいて絶対に団結を守りぬいてみせると固く決意していました。現場は怒りの声で満ちていたし、闘いの方針を求めていたのです。
 しかし、労働運動全体を覆ったのは、攻撃の前になす術なく後退していく現実でした。24万人の組合員を擁していた国労は闘いの方針を出すことができないまま4万人まで切り崩され、動労本部は自己保身のために、総評を脱退して民営化の手先になり果てたのです。

 社会に何が起きたのか

 国鉄分割・民営化は、労働運動全体に激しいショックを与える事件でした。結局、2年後の1989年には総評が自ら解散し、社会党も1995年に解散に追い込まれたのです。
 だが、なぜこんなことが可能になったのか?
 なぜ労働組合は有効な反撃を組織することができなかったのか? 
 その最大の理由が国鉄改革法にありました。国鉄改革法では〈国鉄とJRはまったく別法人〉〈JRの社員は国鉄から承継するのではなく新規採用とする〉〈新規採用だから誰を採用するかはJRの自由だ〉と定められたのです。
 そして、JR各社の定員が閣議決定されました。その時点で「3人に1人はクビ」の現実をつきつけて、労働者と労働組合を激しく揺さぶったのです。
 国鉄改革法は、「採用の自由」の名によって「解雇自由」への扉を開け放つものでした。
 ちょうど同じ年に労働者派遣法が施行されています。一旦全員解雇・選別再雇用方式の民営化を合法化した国鉄改革法と労働者を「モノ」として使い捨てていくことを合法化した労働者派遣法の成立は、労働者の雇用や権利に対して打ち下ろされた決定的な一撃でした。
 その後、この社会に何が起きたのかは多くを語る必要もありません。
 昨年7月、非正規の労働者がついに2000万人を超えました。「格差」「貧困」「ワーキングプア」「非正規」「ブラック企業」「過労死」「解雇自由」……。そして、安倍政権のもとで、秘密保護法の制定や集団的自衛権の容認、マスコミや教育の支配など、改憲と戦争に向けた反動が噴出しています。社会全体がこんな現実で覆い尽くされる出発点が国鉄分割・民営化だったのです。

 国鉄分割・民営化はいま現在の問題

 しかも、民営化は終わりなき攻撃でした。民営化後に職場を吹き荒れたのは、鉄道のあらゆる業務を数百にものぼる何次もの下請け会社にバラバラにして外注化していく攻撃であり、労働者を5年間の期限つき雇用でどんどん使い捨てていく非正規職化攻撃でした。
 そして鉄道の安全は崩壊しました。JR北海道で起きていることを見て下さい。それは、民営化によって生み出された底知れぬ闇です。国鉄時代2万8千人いた職員数は、いま7千人以下です。線路を保守し、列車を検査しているのは、「時給700円」で下請け会社に雇用された非正規の労働者です。
 4千人以上に及んだ民営化時の首切り、その後も続いた激しい要員削減。鉄道運行や安全に関わる業務のほとんどが外注化され、技術継承は崩壊しました。航空機等との競争に勝つための無謀なスピードアップ。そしてそれにも関わらず破はたん綻し続ける経営。
 しかも、それは北海道だけの問題ではありません。「稼ぐ」という経営目標の下に労働者を駆り立てて107名の生命を奪った尼崎事故。国鉄分割・民営化が生み出したのは恐るべき現実でした。
 10数年にわたって資本との激しい攻防を続けてきた外注化阻止闘争の渦中で、これだけは絶対に実現したい、実証したいと思い続けてきたことがあります。
 それは、民営化・外注化攻撃に立ち向かえずに後退し続けてきた労働運動の現実を変えること、雇用と安全を根底から破壊する新自由主義労働政策に対し、労働組合の闘いがそれに対抗する力をもっているんだと示すことです。
 国鉄分割・民営化は、いま現在の問題です。すべての労働者の権利喪失の原点となった攻撃です。だから、絶対にあいまいにしてはならないと闘い続けてきました。
 そして、われわれの闘いは、ついに反動東京高裁をして、採用差別は不当労働行為であった、不採用基準は不当な目的、動機に基づいて作られたものだと認めさせるところまできました。
 同じ難場裁判長が出した国労事件の判決では「不採用基準は具体的であり合理的」と判断していたものをひっくり返したのです。
 しかし、判決はそこから一転し、「JRには採用の自由があるから、採用候補者名簿に記載されることが直ちに同社に採用されることを意味するものではない」と言って、解雇撤回を拒否しました。
 不当労働行為を否定できなくなっても、なを国鉄改革法を必死で護持し、不当労働行為の責任はJRには及ばないと言い張ろうというのです。
 しかし、その結果、判決は矛盾だらけのものになりました。国鉄改革法はすでに破綻しています。これは、27年間、絶対にあきらめることなく闘い続けてきた大きな成果です。

新たな証拠も提出

 裁判所には、旧国鉄幹部自身が、JR不採用の選考基準作成の過程を生々しく自白している新たな証拠も提出しています。「JRに法的責任なし」どころか、井出や葛西ら国鉄幹部とJR設立委員長が相談し、共謀して決定していたことが明らかになったのです。
 東京高裁・難場裁判長はそれを完全に無視して9・25判決を下ろしました。しかし、真実は一点の曇りもなく明らかになったのです。最高裁を怒りの声で包囲し、何としても解雇撤回・JR復帰の勝利判決をかちとりたい。
 それができれば、解雇も不当労働行為もやりたい放題のこの社会のあり方そのものへの反撃の手がかりをつかむことができます。安倍政権がやろうとしている公共部門丸ごとの民営化や総非正規職化攻撃の息の根を止めることもできます。私たちは、解雇撤回の勝利を手にするまで闘い続けます。10万人署名運動をはじめ、これまでと変わらぬご支援をお願いいたします。 

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