暴かれた真実2ーA
 
東京高裁 不当労働行為を認定

「国鉄分割・民営化に反対する…労働組合に所属していること自体を理由として、差別して不利益に取り扱う目的、動機(不当労働行為意思)の下に、本件名簿不記載基準を策定し、…JR東日本の採用候補者名簿に記載しなかったものと推認するのが相当」

「JR東日本は、国鉄とは別個独立の新法人であり…いかなる者を雇い入れるか…自由にこれを決定することができる以上、採用候補者名簿に記載されることが、直ちに同社に採用されることを意味するものではない」

動労千葉鉄建公団訴訟(解雇撤回・原職復帰裁判)東京高裁判決(2013年9月25日)より

R採用差別容認は憲法28条の解釈改憲

下山房雄(九大名誉教授)

 いま安倍晋三がそれを「取り戻す」と呼号している戦前日本は、天皇制批判を死刑で、資本主義批判を無期懲役で威嚇する治安維持法によって左翼政党を鎮圧する体制であり、ヨーロッパでは19世紀の過程で確立し、アメリカでは1930年代のニュー・ディール政策で容認された労働基本権(団結・交渉・争議の労働者権利)を欠く体制であった。それが貧困と戦争を横行させた。その戦前戦中の姿を反省したはずの戦後日本レジームの法的主柱は日本国憲法である。それは、近代先進国では普通のことである結社の自由を21条で、労働基本権を28条で定めている。人類の世界史の歩みの先端を行く戦争放棄・戦力不保持の9条規定を護り活かすとともに、「普通の国」にあって当然の労働基本権擁護の28条護憲活憲活動が大事だと私は常々考え生活している。

 戦後史70年近くの間に、9条が在日米軍および自衛隊の存在、そして自衛隊の海外出動という形で無視され破られてきたのと並行して、労働基本権が侵害し続けられてきた。後者は、49?50年のレッドパージ、60年代以降の時には殴る蹴るの白色テロまで行いながらの戦闘的労働組合の破壊→会社派組合の主導権確立、そして組合解体の総仕上げとしての80年代「臨調行革」―国鉄つぶしJR発足の際の採用差別として実践された。

 その結果、資本の野放図な利潤追求に拠る人間破壊を規制する社会的勢力としての労働組合の力は一層弱まり、労働者一人年間スト日数(2008年)=日本0・0日、アメリカ1・5日、フランス6・2日、韓国5・0日にみる如く、日本は異常なスト無し社会となった。好況期に賃金が下がるという明治以来未曽有の現象まで起きるに至っている。動労千葉の団結権擁護裁判闘争の勝利を私が強く願うのはそういう異常状況への反撃の流れに与したいと思ってである。

 ところで、国鉄民営化の折の採用差別で被害を受けた労組は国労、全動労、動労千葉の3組合だが、その共同闘争が行われたのが2006年2月の被解雇者「1047名連絡会」結成から、同年夏の動労千葉が参加せず参加できなかった雇用地位確認=解雇撤回を要求しない「4者4団体」路線発足の数か月でしかなかった闘争の弱点もあって、四半世紀にわたって続く解雇撤回―JR復帰の闘いは困難を極めた。

 しかし、国鉄改革法23条によって、採用差別があったとしても別法人であるJRには責任なしとする法理が、闘われた多くの裁判において裁判所が労働者を敗訴に追い込む道具とされたにも関わらず、最高裁がその法理を確認した際(2003年12月)は3対2の僅差であったこと、国労内4党合意反対派による鉄建公団訴訟東京地裁難波判決(2005年9月)において採用候補者名簿作成において不当労働行為があったと認められたこと、動労千葉の同様訴訟に対する東京地裁白石判決(2012年6月)が名簿基準作成に不当労働行為があったとして1987年4月から90年3月に至る3年に限ってのJR雇用を確認したこと、白石判決のJR雇用を取り消す後退をしたが不当労働行為の認定は維持した東京高裁難波判決(2013年9月)、さらには国鉄改革法23条とまったく同文の日本年金機構法附則8条の発動で解雇された社会保険庁労働者525名中人事院に不服申し立てをした70人の34%24人に解雇処分取消判定が下されたこと、これらはその法理がわれわれの闘いによって揺らぎ裂け目を生じたことを明示している。

 2005年の難波判決と13年9月の難波判決に共通する難点弱点は、実際のJR発足の際には採用候補者名簿記載者は全員が採用されたのにも関わらず、そのJR当局の実践を超えての法解釈、すなわち名簿に記載されても実際に採用されないことがあり得るとの法解釈を行って解雇撤回・JR採用を認めないところにある。この点でJR当局の経営実践よりもいっそう反労働者的な法理念というほかない。(JR東日本株主会元会長)

暴かれた真実2ー@ ←  → 暴かれた真実2ーB