動労千葉からの訴え

田中康宏 ( 国鉄千葉動力車労働組合委員長)

大恐慌時代に通用する労働運動を

 24年間の長きにわたって国鉄闘争にご支援をいただいたみなさんに心から感謝とお礼の気持ちを伝えたい。
 和解案が出て以降、労働者の未来や権利にとって、本当にこれでいいのか。自分自身もずいぶん考えて、多くのみなさんとも相談をして、こういう呼びかけの先頭に立とうと決意をしました。それもこれも長い間、闘いを支えてくださった全国のみなさんがいて初めてできた決断です。本当に心から感謝を申し上げたい。
 国鉄闘争は、かれこれ30年近い闘いになります。動労千葉は、国鉄分割・民営化に反対してストライキに立ち28人の解雇者を出しました。それに加えて採用差別という形で12人の解雇者。小さな労働組合ですが都合40人の仲間が解雇されて、この攻撃に立ち向かってきました。
 24年間の闘いの結末が本当にこれでいいのか。国鉄改革法を承認するためだったのですか。JRに法的責任がないことを承認するためだったんですか。中曽根に「よくやった」と言わせるためだったのですか。「国鉄改革は多大な成果をもたらした」と政府に言わせるためだったんですか。
 今回の和解は絶対に間違っている。僕はそう思っています。24年間必死になって闘い抜き、この和解に応じざるを得なかった1047名の闘争団を責める気はありません。だけどこういう状況をつくり出した国労本部とか幹部たちに本当にこれでよかったのかと言いたい。
 国労という労働組合はいま、尼崎事故について口をつぐんで何も言わない。JRと「包括和解」したからです。あれだけの事故が分割・民営化によって引き起こされて、それに口をつぐむために24年間闘ってきたんですか。僕は、この事態をどうしたらいいのかを本当に考えてきました。結局「そもそも労働組合って一体何だ」ということに行き着いた。
 今回の和解は、労働組合に対する歴史を画する攻撃です。世の中を動かしているのは労働者です。その労働者が団結したのが労働組合です。労働組合を変質させ、闘わない労働組合に変える。結局すべての攻防の焦点はここにある。その観点から見たら、今回の攻撃は労働組合の決定的な変質につながる。ここで労働組合が何をするか問われている。

労働組合はこの程度のものなのか
 今回の運動を始める決断をしたときに三池闘争の歴史をもう一回見直した。「総資本対総労働」と言われ、現場の労働者は闘う意志があり、ホッパー決戦で警察が数万人を動員し、支援者側も数万人を動員して激しく衝突をする寸前に瞬く間に闘いが幹部たちが斡旋案を飲んで終わっていった。
 日本の労働運動の歴史を見たら、そういうことの繰り返しです。労働組合はこの程度のものなのか。いや、労働組合は本当はもっとすばらしい力を持ったものではないか。一人ひとりの労働者が本当に団結したときに社会を動かす力を持っている。
 国鉄分割・民営化との闘いを24年間継続しても、結局この程度になってしまうのか。僕はそんなくやしい思いだけはしたくない。
 1047名の解雇撤回闘争が24年間、国鉄分割・民営化という戦後最大の労働運動解体攻撃の決着を許さずに全国の数十万人の労働者の支援を受けてここまで継続したことの持つ意味は、戦後の労働運動の歴史の中でも画期的なものです。新自由主義攻撃に対する決定的な対抗力だった。今日まで改憲を阻止してきた力でもあった。
 にもかかわらず、この程度で終わってしまうのか。目の前で財政危機などを理由にして公務員労働者――自治労、日教組への全面攻撃が始まろうとしている。国鉄分割・民営化以降、非正規職に突き落とされた1千万人を越す労働者たちがどんな状況におい込められているのか。そのすべてが国鉄分割・民営化から始まった。
 それなのに本当にこれでいいのか。この闘いは、私たち自身の解雇撤回の闘いであると同時に、あらゆる労働者の怒りの声を結集してその中心になって、そのすべての力を結合していく闘いだ。そういうこととは関係なく自分たちだけがよければいいというのは絶対に違う。そこが一番問題だと思います。
第2の分割・民営化攻撃との闘い
 JRの職場ではまさにいま、「第二の国鉄分割・民営化」とも言うべき攻撃が始まっている。国鉄の分割・民営化は、国鉄を7つの民間会社に割りましたが、今度は鉄道業務をバラバラにしてすべて外注化して、JRで働く労働者を非正規職に突き落として、下請会社に追いやって安全を崩壊させることが目の前で始まっている。
 今度は7つどころじゃない。JRを数百の会社に分割する。まさに第2の分割・民営化攻撃です。こういうときに「国鉄分割・民営化は成功して終わりました」ってことでいいのか。
 僕らは去年10月に外注化計画が提案されてから今年春までに5回のストライキを構え、4月1日実施を止めました。これは千葉だけでなく全国で起きている。すでに2001年から始まっていました。しかし和解のために国労も含めてほかの労組はなんの抵抗もしないで飲んできた。
 あらためて訴えたい。国鉄分割・民営化は日本における新自由主義と呼ばれ、競争原理で社会全体にローラーをかけ、労働者を徹底的に突き落としていく攻撃の始まりでした。労働者がどんな目に遭ってきたのか。その過程で労働組合がどれだけ攻撃を受け、後退をしてきたのか。これも誰もが経験をしたことです。
 だから国鉄分割・民営化反対の闘いは、これに抗してどんな小さな力であろうとも日本に闘う労働組合を甦らせようと、この旗のもとに闘ってきたのではなかったのか。だから、あらためて全国のみなさんのご支援をお願いして、新自由主義に対決する、この時代に通用する、新しい労働運動をもう一回つくり上げたい。
 動労千葉は小さな労働組合です。どこまでこの声が全国の仲間たちに通じるのか。ゼロから始まる闘いだと思います。だけど、どんな小さな労働組合でも、闘う前から屈すれば団結はバラバラになって、分裂し、崩壊していく。動労千葉が国鉄分割・民営化を前にして、闘いの中に道を見いだして団結を守り抜いたように、これからも団結を守っていく道を探ろう。こういう決意です。
 新しい闘いのスタートです。資本主義体制はガタガタです。ギリシャやスペイン、ポルトガル……全世界で怒りの声が巻き起こっています。日本の労働運動がどうしてまだこんなにおとなしいのか、怒りの声が社会に積もりに積もっている。こういう声を国鉄闘争を中心にして結集したい。微力ですがその先頭に動労千葉は立ちたいと思います。