DC通信No.151 10/12/09
検修・構内業務全面外注化を阻止しよう
DC通信目次 

検修・構内業務全面外注化を阻止しよう
2月京葉車両センター構内業務外注化―4月全面外注化許すな!

1. はじめに

(1) 外注化攻撃が再び動き出している。昨年10月に提案された検修構内業務の全面外注化提案に関する団体交渉は1年近くストップしたままになっている。しかし、団交すら開かず、現場には何も知らされないまま、水面下で外注化の準備がどんどん進められている。フタが開いたときには全ての準備が終わっており、もう後戻りできない状態にしてしまおうという汚いやり方だ。

(2) 東労組は全てを知っていながら現場には何も知らせていない。いっさいを隠しているのだ。こうした情報が現場に伝わったら怒りの声が吹き上げるから、団交など開かないでやってしまえと、会社と手を結んで外注化の手先になっているのだ。こうやって会社と東労組の手で、検修構内業務の全面外注化が強行されようとしている。

(3) 千葉支社では、京葉車両センターの構内業務を2月にも外注化しようという計画が進められている。これは、2001年に東労組等が締結した委託協定に基づくものだ。そして本社は、4月にも検修構内業務の全面外注化を全国で一斉に実施しようと動いている。

(4) 絶対に許してはならない。昨年10月の提案は、検修・構内業務の文字通り全面的な外注化攻撃だ。JR側に残る業務はほとんどない。労働者ごと下請け会社に丸投げするものだ。その先に待っているのは間違いなく「転籍」だ。検修、保線をはじめ、鉄道業務を数百もの下請け孫請けにバラバラに売り渡していいはずはない。雇用が破壊され、そして技術継承は断たれて安全が崩壊する。外注化阻止に向け今こそ怒りの声をあげよう。

2. 何が起きているのか・・水面下で進む外注化の準備

◎外注要員数の算出

 本社運輸車両部からは、各検修職場に、「直外双方の業務量を算出してJRグループ会社に割り振る要員の目安を作成しろ」という調査依頼の指示文書が出され、9月末には現場から本社への報告書が送られている。業務毎の詳細な直営外注の区分が示され、それに基づいてこの1年間の作業量作業事態を調べて、それに基づいて要員数をはじきだせというものだ。
 組合が申し入れた解明要求にも全く答えず、労資間では何ひとつ議論しないままこうしたことが進められているのだ。

◎すでに委託契約を締結

 さらに、JRと車両整備会社との間では、すでに外注化に関する契約書がどんどん結ばれている。団交も開かないままこんなことがどんどん進められているのである。例えば、8月1日付で、千葉支社と千葉鉄道サービスの間で「教育訓練契約書」が締結されている。業務を委託外注化した際にも、技術指導や教育訓練はJRが行い、車両整備会社はそれに対して訓練費用を支払うという契約である。構内運転士に義務づけられている定例訓練等を想定してのものだ。これは、双務契約を結んでいるという形式を整えることで、偽装請負をすりぬけようとするものだが、後で述べるようにそれ自身が委託外注化が適法に行なわれているかのように偽装する行為に他ならない。

◎一斉に「偽装請負隠し」

 さらには、▼請負会社に業務を指示する際の文書について、「作業指示書」という名称を「作業発注書」に変えたり、▼JRが請負会社の社員を直接指示するのはやめろと指示したり、▼まともな双務契約になっているかのような「契約書」を作ったり、▼JRと請負契約関係のない孫請会社の社員が請負側の責任者として記載されているような業務実態に対し、それはマズイから直ちに変えろと現場に指示したりということが行なわれている。
 こうしたことを指示する文書には、全て「取扱注意」の印が捺されている。業務実態はそのまま何も変えず、書面上だけ全て隠せというのだ。まさに「偽装請負隠し」である。偽装の偽装に他ならない。

◎外注化体制作りの人事  

 千葉支社は、検修構内業務を請負う専門的技術など全くもっていない千葉鉄道サービス側にその体制をつくるために、千葉運転区長を千葉鉄道サービス京葉事業所長として出向で送り込んだ。50歳を少しこえたばかりの年令であり、異例の人事である。さらには、それより以前に天下っていたJR幹部OBを外注化体制作りの責任者にすえ、連日JR千葉支社と千葉鉄道サービスとの協議が行なわれている。10年間頓挫してきた外注化に手をつけるために、京葉車両センターの構内業務に狙いを定めて外注化の突破口を開こうとしているのである。

3. 検修・構内外注化は違法行為=偽装請負だ

◎業務委託(請負)に関する労働省告示

 労働省の「告示」では、業務委託(請負)が適法なものであるためには、業務を請け負った会社(今回の外注化の場合は千葉鉄道サービス)は、次のような条件を満たしていなければならないことになっている。
 何でも委託外注化できるとしたら、労働者の雇用や権利、安全はたちまち崩壊してしまうことになる。だから、業務の委託外注化には、法律上厳しい制限が設けられているのである。

 自ら行なう企画又は自己の有する専門的な技術もしくは経験に基づいて、業務を処理すること。

 請け負った業務を自己の業務として当該契約相手方から独立して処理するものであること。

 労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行なうこと。

※ 労働省告示第37号(昭和61年4月17日)

 つまり、請負会社は、@専門的な技術をもっていること、A請負った業務をJRから独立して処理できること、B業務指示は全て自分でできること(JR側が指示するのは違法となる)が条件となるのだ(この告示では、請負会社は「業務の処理について法律上のすべての責任を負うこと」とか、「機械、設備、器材、材料、資材は自己の責任と負担で準備しなければならない」など、もっと厳しい定めがされている)。
 こうしたことから見れば、JR東日本がやろうとしている検修構内業務の外注化が偽装請負=違法行為にあたることは明らかである。

◎管理者送り込みの違法

 JR千葉支社は、京葉車両センターでの外注化を狙っているが、千葉鉄道サービス京葉事業所長への千葉運転区長の送り込み(出向)自体が偽装請負にあたるものだ。
 2005年、松下プラズマディスプレイという会社で偽装請負が発覚し、会社は労働局からの是正命令を受けて、一旦は全員を直接雇用にするという事件があった。それから半年後、会社は、また請負契約に戻した上で、「偽装請負ではない」という形をつけるために、「技術指導」の名目で社員を請負業者側に出向させて、その出向社員が業務を指揮するという形をとるという卑劣な攻撃を行った。しかし、これも「責任回避のための脱法行為だ」として、厚生労働省が指導にあたるという前例がある。
 今、千葉支社がやっているのは、まさにこれと同じことである。業務を外注化するために、JRの管理者を請負会社に出向させ、形だけ請負会社がやっているような形式をつくるのは、最も悪質な偽装請負にあたるものだ。

◎「教育訓練契約書」の違法

 第2に、8月1日に千葉支社と千葉鉄道サービスが結んだ「教育訓練契約」自身が明白な偽装請負契約に他ならない。教育訓練契約の仕組みは次のようなものだ。検修構内業務の外注化を委託外注化し、今度は逆に、それに従事する労働者の「技術指導や教育訓練」について、「一人1時間1000円」で千葉鉄道サービスがJRに委託するという契約書である。これはまさに法の規定に違反することを逃れるための故意に偽装された違法契約だ。

《「教育訓練契約」の仕組み》
JR千葉支社
検修・構内業務
―――――――→
(委託)

教育訓練
←――――――
(逆委託)
千葉鉄道
サービス

 この点でも、厚生労働省は「発注者(JR)が、これらの要件を逸脱して技術指導を行なうことはできません」と明確な指針を出している(厚生労働省発行のパンフレット「労働者派遣請負を適正に行なうために」)。例外として認められるのは次の3つのケースだけである。

@ 請負事業主が、発注者から新たな設備を借り受けた後初めて使用する場合、……当該設備の操作方法について説明を行なう際に、請負事業主の監督の下で労働者に当該説明を受けさせる場合。
A 新製品の製造着手時において、発注者が、請負事業主に対して、労働者に当該説明を受けさせる場合。
B 発注者が、安全衛生上緊急に対処する必要のある事項について労働者に指示を行なう場合。

 つまり、発注者(JR)が請負会社の社員に対して直接説明ができるのは、@請負会社が発注者から借り受けた新たな設備を初めて使用する場合、A新製品の製造着手時、B安全衛生上緊急に対処する必要のある場合だけに限られている。それも「請負会社の監督の下で」である。
 今回の「教育訓練契約書」に定められたのは、明らかにこのようなケースではなく日常的な技術指導、教育訓練に関するものだ。しかも、こんな契約をしなければならない現実は、検修構内業務が「JRから独立して処理する」ことなどできず、千葉鉄道サービス側に「専門的な技術力」が無いことを示すものだ。

◎JRから「独立して処理」は不可能

 第3に、そもそも構内運転業務は、こうした問題をぬきにしても、「JRから独立して処理する」ことなど絶対にできないものであり、外注化など大前提からして間違っている。
 いうまでもなく、構内運転業務は、日々の入換計画をつくる区の計画担当との関係、信号所との関係、指令との関係で成り立っている。計画担当からその日の入換計画書をわたされるだけでなく、入換作業開始時には信号所に信号の開通を要請し、通告を受けて作業を開始する。さらに入出区時等は指令の指示に従うことになる。
 少なくとも現時点は、信号所や指令はJRの直営事業であり、構内運転業務を「JRから独立して処理する」ことなど全く不可能だ。要するに構内外注化は、どんなに形をとりつくろおうが、根本的ところで偽装請負にあたるということだ。

◎東労組の偽装請負協定

 だから2001年に東労組が締結した「外注化協定」の議事録確認の解説でも、次のような表現が随所に出てくる。

 乗務中の指令指示や出場後の着発線変更等の運転取扱いに係わる指示連絡については、JRが直接乗務員に行なうことになる。

 作業ダイヤはJRが作成し、勤務指定についてのみ整備会社が行なうこととなる。

 作業中の担当者間の打ち合せ等は、従来通りの方法で必要の都度、直接行なうことになる。

 これは、労使一体で違法請負を推進することを確認したものだ。なぜこんな違法行為まで確認して外注化を進めるのか。まさに東労組は外注化の手先だ。
 検修業務だって基本的には全く同じだ。例えば、駅派出業務などは指令や運転士との関係ぬきには成り立たないものだし、事故復旧業務は、規程上明確に「事故等発生時の復旧の指揮は、現地対策本部長がとるものとする」(運転事故等対処手続第7条」と、JRが指揮することが定められている。

4.業務外注化攻撃の本質

 検修構内外注化攻撃が始まったのは2001年からである。しかしこの10年、千葉支社管内で外注化されたのは、京葉車両センターの車輪転削業務だけであった。千葉では「シニア制度」以来の闘いによって、外注化攻撃をほぼ完全に阻止してきたのだ。東労組の裏切り妥結(それに続いて国労も含め、動労千葉以外の全ての労組が闘わずして容認した)によって、千葉支社以外では外注化がどんどん進められる事態の中でこれは画期的なことであった。

◎「逐次外注化」から「全面外注化」へのエスカレート

 昨年10月の検修構内業務の委託提案は、定年退職後再雇用された労働者を使って逐次外注化するというそれまでのやり方とは全く違う決定的なエスカレートを意味するものだ。今度の提案は、今検修職場に働いている労働者の強制出向という手段を使って、検修構内業務のほとんどを労働者ごと下請け会社に丸投げする攻撃である。
 だがそれは、「逐次外注化」を認めた時点で当然予想されたことである。今度の攻撃もこれで終わる訳ではない。これを許せば、否応なく何年か後には車両整備会社への「転籍」が強制され、雇用も労働条件も全てが破壊されることになる。そして、間違いなく技術継承と安全が崩壊する。
 近い将来、JRの社員であること自体を奪うことにつながる重大な攻撃なのに、東労組や国労はなぜ一番肝心なことを現場の組合員に言わないのか。真実を隠し、組合員をだまして、組合員の雇用や権利労働条件安全を売り渡す。こんなものは労働組合ではない。

◎外注化の真の目的は? 

 なぜJR東日本は、ここまでして業務の外注化を推し進めようとするのか。何が目的なのか。単に働いている人間ごと検修構内業務を車両整備会社に移すだけだったら、会社にとってこんな面倒なことをする意味はない。何ヵ月もの時間を費やして「偽装請負隠し」をやったり、沢山の契約書を作ったりして外注化する目的は何なのか。たったひとつだ。抜本的な賃下げを強行するためである。賃下げでコストを削減する。これ以外に目的はない。
 だから、その次にくるのは間違いなく賃下げ転籍だ。転籍してしまえば、賃金水準や労働条件はJRとは全く別なものにすることができる。これが外注化の本当の狙いだ。構内検修部門は別会社にしてしまう。そこに働く労働者はJR社員ですらなくしてしまう。そして超低賃金の非正規雇用に突き落としていく。これが外注化の目的だ。その過程では、さらなる要員削減労働強化など、あらゆる手段を使って総額人件費の抑え込みが行なわれるだろう。
 そしてそれは、必然的に車両検査修繕体制や技術力そのものが弱体化し崩れていくことを意味する。外注化がもたらすのは、雇用賃金破壊と安全の崩壊である。

◎闘えば阻止できる 

 われわれは組織の総力をあげてこの攻撃に立ち向かうことを決意し、昨年来闘いに立ち上がった。千葉支社は、幕張車両センターで動労千葉の組合員を交番機能検査から全て外し、支部役員を次々に配転するなどの攻撃を仕掛けてきた。しかしわれわれは、東労組や国労の組合員にも、これは労働者の未来をかけた闘いなのだということを訴えて何度もストライキを構え、攻撃の矛盾点弱点を徹底的に追及して闘い続けた。
 とくに、若い人たちにとっては本当に深刻な問題だ。JRに就職できて良かったと思っていたら、車両整備会社に追いやられ、その先には非正規職に突き落とされるかもしれないのだ。
 動労千葉の闘いは小さな火花に過ぎない。しかしそれが全体に火をつけ、東労組の中にも反対の声が広がっていった。今回の提案や、10年間職場でまかり通ってきた現実そのものが違法行為=偽装請負であったことも暴き出され、団交すら開くことができない状態のなかで、今年4月1日の実施はストップしたのである。
 12月3〜4日のストライキでも、幕張と京葉で3名の仲間が動労千葉に結集してくれた。ここに示されたのは、労働組合がちゃんと闘えば外注化は阻止することができるということである。

5.外注化の手先=東労組に怒りの声を

「棲み分ける」 ? 

 だが、述べてきたように、会社と東労組は形式だけを整えて違法行為を隠ぺいして外注化を強行しようとしている。東労組は、昨年10月の提案に対しても次のように言っている。

 JRとグループ会社との棲み分けを行い、異常時に強い車両メンテナンス職場の確立が必要であると考えています。

 「棲み分け」など誰も望んでいない。なぜ、「反対して闘う」と言わずに初めから「棲み分ける」などと言うのか。会社が提案した内容は「棲み分け」などではなく、検修構内業務の丸ごと外注化だ。こんなウソを並べて労資一体で現場に外注化を強制しようというのだ。

◎「7〜8年で委託の最終段階」(01年協定)

 さらに、絶対に許せないことがある。東労組は2001年の「外注化協定」の中で、「7〜8年の間に委託の最終段階までもっていく」ことを確認したと解説しているのだ(「グループ会社と一体となった業務体制の構築に関する協定及び議事録確認/解説集」19ページ)。これは01年のことだから、2008〜9年の時点では検修構内業務を丸投げ的に売りとばしてしまおうとしていたということだ。「委託の最終段階」などとよくも平然と言えたものだ。会社と一体となってこんなことまで容認し、組合員に強制するようなやつらは絶対に労働組合と呼ぶことはできない。
 だが、事は会社や東労組が思い描いたとおりには進まなかった。千葉では完全に頓挫し、全国的にみても委託できたのは1割に満たなかったのである。それは、外注化攻撃そのものがずさんで矛盾だらけだったからだ。
 それで出されたのが昨年10月の新たな提案だった。それは、「シニアの雇用先」というオブラートを全てひき剥がして、むき出しの丸投げ外注化を強行するものであった。当然にも現場からは怒りの声が吹き出した。会社と東労組は「どうせ現場はあきらめて最後は言いなりになるだろう」と甘く見ていたのだ。
 今度ばかりは絶対そうさせてはならない。働く者一人ひとりの未来がかかっているからだ。外注化は阻止できる。外注化は現場の労働者が強制出向から何からを認め、下請け会社で言いなりになって働くという条件の下でしか成り立たない。現場の怒りの声と団結した闘いが全てを決めるのだ。外注化阻止に向けともに闘おう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

★ 2月 京葉車両センター構内外注化許すな!
★ 4月 検修構内業務全面外注化許すな!
★ 動労千葉に結集しともに闘おう!

外注化は安全崩壊もたらす
 業務外注化は安全の崩壊をもたらすものだ。例えば、7月22日早朝4時頃、山陽新幹線・新神戸−西明石間の須磨トンネル内で起きた保守作業車同士の衝突・脱線事故がそのことを示している。この事故で保守作業車の運転士が負傷し、現場は午後2時すぎまで不通となった。
 この事故は、レールを研磨する作業を行なっていたレール削正車に、トンネルの保守作業を行なっていたトンネル保守用車が衝突したものだ。どちらもJRが丸投げ外注化した業務であった。削正車と保守用車は、それぞれ「レールテック」「大鉄工業」という別々の下請け会社が所有し、さらにその運転や業務にあたっていたのは、「エージーエム」「清水建設」その他の孫請け、ひ孫請け会社の労働者であった。JRの社員はひとりも居なかった。しかも、JRが組んで丸投げした作業ダイヤは時間的に相当無理なものであったと言われている。事故はこうした中で起きたのだ。これが外注化の実態だ。
 外注化を許してはならない。闘いに立ち上がろう。


DC通信目次 DORO-CHIBA