たたかう労働組合の全国ネットワークをつくろう

たたかう労組ネットワーク 

2001年春闘勝利!学習・交流集会 (2001/02/17-18)

「三組合からの問題提起」より
「2001年春闘と国鉄闘争の現局面」動労千葉書記長 田中康宏

はじめに

 おはようございます。 私の方からは、国鉄闘争の現状ということを中心にしながら、動労千葉がこの春闘をどのように見て、これにどう立ち向かおうとしているのかということを含めて、話を進めさせて頂きたいと思います。
 国鉄闘争、これは1047名の解雇撤回闘争を中心に据えた全体の闘いということになります。本当に大きな転換点を迎えています。ある意味では国鉄分割・民営化攻撃に立ち向かったときにわれわれが突きつけられた課題と同じぐらいの大きな攻防の焦点を迎えているのではないか。ここで勝負できるかどうかが非常に大きな課題だと思っています。

1.2001年春闘とわれわれをとりまく情勢

 冒頭に「2001年春闘とわれわれをとりまく情勢」ということで、こうした情勢が国鉄闘争のこれからの帰趨、方向性にとっても大きな基礎になると考えますので、簡単にここに触れたいと思います。

(1)崩れ去った「根拠なき楽観論」−アメリカバブル経済の崩壊

 私は去年の暮れから春闘を目前にした今日までの状況を見ていて、時代が大きな転換点を迎えているという気持ちを強くしています。ついにアメリカのバブル経済が去年の暮れぐらいから崩壊をはじめて、年が明けてアメリカの経済が予想を越えて急速に減速しています。一気にマイナス成長に突入するかもわからないという事態ですが、これが私たち労働者にとって持つ意味は、非常に大きなものになるというのが私たちの認識です。春闘や、様々な解雇、倒産、首切り、大リストラ攻撃などについても、こうしたことと無縁では話をすることはできないと考えています。

 生み出された奇妙な状況の終わり

 レジュメでは生み出された奇妙な状況、あるいは構造が終わったのではないかと書きました。この間、アメリカの経済について、ニューエコノミーとかIT化等々、もはや景気の後退などなく持続的に成長を続ける新しい経済が生まれたといったようなことがいっぱい宣伝されていたわけです。まじめにこんなことが議論されていた。しかしそんな楽観論は完全に終わった、崩壊しました。
 奇妙な状況と書いたのは、世界一の借金国がバブルで踊っているという、こんなあり得ない構図ですね。この間の世界経済の流れをみていくと、アメリカは世界に市場開放を要求し、金融自由化を要求し世界をバブルとバブル崩壊の波にのみ込んで、いわゆる後進国の成果をもぎ取っていく。その結果アメリカだけが一人勝ちをするという構造だっただろうと思います。
 しかしその実態は世界中がアメリカのバブルを支えなければならなくなる。こんな成り立つはずもない奇妙な構造が10年間も続いてきた。それがついに崩壊した。残るのは一体何なのか。戦後の資本主義体制は明らかに崩壊過程、恐慌過程に入ったとみる必要があると思います。

 しかしわれわれもその中に住んでいるわけで、そういう逆さの世界に住んでいると、その世界が逆さだということがわからなくなってしまうということだってあり得る。世界で労働者が10億人失業し、まともに生活できないような状況に置かれている。
 それは世界の就業人口の10%にあたるとOECDの2001年版雇用報告でもいわれている状況で、にもかかわらずこれを異常な事態だと思わなくなってしまう。われわれもそういうところからもう一回、労働運動を根本的に作り直さなければいけないというように考えています。

 結局、この数年の間つくられてきた構造というのは、生き残った者だけが正当化されるという事態ではないかと思います。

 資本主義が生み出した廃墟のような現実

 もう一方、日本の状況についてごく簡単に触れておきたいと思います。
 ご存じのように日本の国債発行残高は666兆円、日本の経済の実に4割が借金で回っているという状況です。1998年からこの3年あまりの間で130兆円の財政出動をしている。バブルの頂点が1989年ですが、バブルが崩壊して何とかしなければいけないということで、1992年から97年の間に100兆円の財政出動をしている。
 つまりこの10年間で都合230兆円もの財政出動をしたにもかかわらず、それはブラックホールに吸い込まれるように消えてなくなっている。銀行やゼネコンが抱えた莫大な不良債権が国の不良債権につけ回されただけで、事態は深刻化する一方です。
 こうした中で労働者にだけは徹底した攻撃がかけられてきている。666兆円というのは、赤ちゃんからお年寄りまで含めて国民一人あたり560万円になるそうですが、ばく大な借金だけが残された。まさにこうした事態というのは、資本主義体制の廃墟だというふうに見なければいけないと思います。

 連合などは、それをあたかも自分の廃墟のように思って、何とかそのかけらを拾い集めて立て直そうとしている。しかしそれは労働者にとって廃墟でも何でもない。こういう状況の中でわれわれは、新しいものを作り上げる、立ち上げる、築き上げなければいけない時代に立っているんだと考えています。

(2)2001年版労問研報告−もはや悲鳴に近い内容

 春闘をめぐって2001年の労問研報告が出されました。
 去年の労問研報告の題は「ダイナミックで徳のある国を創る」。徳というのはモラルですね。今の財界の連中がモラルを労働者に要求するなどというのはまさに説教強盗のようなもので、去年の労問研報告は説教強盗だったと私は言っているんです。

 しかし今年の報告を見ると、ほとんど悲鳴に近い。この労問研報告を採択する日経連の臨時総会で奥田会長があいさつをしているんですが、その報告の最後に、「経営者よ、正しく強かれ」という日経連結成の理念にふれて次のように言っています。「経営者よ、正しく強かれという理念はこれからも重要だが、これまでどおりの活動ではその実現は難しい」。要するに日経連も、基本的にサジを投げようとしている。

 さらに「バブルが崩壊して以降、現在までに1500兆円の資産が失われてしまった。これはGDPの三倍にあたる。第2次世界大戦で失われた資産でも、当時のGDPの3分の2だった。関東大震災で失った資産もGDPの3分の1。この10年間で国内総生産の3倍の資産が失われている」と言っています。私はほとんど悲鳴に近いものだという感想を持ちました。

 春闘についても、「労働条件一般を春闘で決めるような時代は20世紀で終わった」と提起している。では21世紀はこうだということが出てるかというと、「21世紀は国民自らがあらかじめ老後や病気に備えていくような自助の徹底が必要である」と、もはや現在の資本主義体制には社会保障制度も福祉政策もやる余裕はないということです。19世紀のような状況に戻すしかないということしか言えない。もちろん、一つ一つがわれわれにとって大変な攻撃の矛先になって襲いかかってくることですから、直視しなければいけないと思いますが、そういう事態になっています。

 もう一つ触れておくと、この報告の中で、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本、あるいはロシア、韓国、インドネシアなど、主要な国の労働者が職場でどれだけ満足しているかという表が出てきます。
 日本の労働者の職場の満足度は、ロシアに次いで2番目に低いんです。しかし職場の定着度を見ると、日本が一番高いんです。これを見るといま労働運動が問われている課題が何なのかがよくわかってくると思います。つまり、労働者はいくら不満を抱えてそれがどんどん募っていても、それだけで闘う労働者になるわけではない。不満、怒りを持って、何とかしたいと思っている労働者が、こうした集まりで闘いの思想に触れ、あるいは現実の労働者の闘いに触れたときに、そこに火花が起きる。
 私たち三組合が「闘う労働組合の全国ネットワークをつくろう」と呼びかけたのもそのような思いからであったと私は考えています。そういう状況が、いよいよ水があふれ出す臨界点まで来ている。そのことを日経連の労問研報告は、言わずもがなの形で言っていると私は読みました。

 まだまだ私たちは力不足で多くの労働者の怒りの声とつながることができていない状況です。しかしその可能性は大きく膨れ上がっていると私は考えています。

(3)連合

 連合なども、労働者の求心力を持つということを半ば放棄しているのではないかと思います。NTT労組があらかじめベア・ゼロという方針を掲げました。連合の中からですら、笹森事務局長などが「こんなことをされたら困る」と批判がおきるような状態です。
 それから日経連と連合が共同でワークシェアリングの研究をはじめるということを検討していて、この1月に立ち上げたわけです。しかしそのとたんに日経連の労問研報告では、「ワークシェアリングという発想を越えて、もっと大胆な雇用の流動化が必要だ」と言われてしまう。
 要するに今こそ闘う労働組合が躍り出ていくことが必要なんだと思います。こうした時代の中でわれわれは今、国鉄闘争を闘い、春闘を闘っているということを冒頭少しお話させていただきました。

2.1・27国労続開大会と1047名闘争

(1)運動史上例のない暴挙

 1047名闘争ですが、1月27日、国労が定期全国大会の続開大会を開催しました。
 国労本部は1000名を越える機動隊を導入し、会場周辺を全部封鎖する状況の中で、「4党合意」を受け入れるという方針の採決を強行しました。当日、何年ぶりという大雪の中で、闘争団や家族や国労の組合員、あるいはこの10数年間、国鉄闘争を物心両面から支援してくれた支援労組の仲間たちは会場に近づくこともできない状態でした。
 国労の代議員などは別のところに集合場所が設けられて、大型バスで入ってくる。それを拒否した組合員は、機動隊に代議員証や傍聴券を見せないと入れない。そればかりかマスコミもシャットアウトする。動労千葉と一緒に闘っている佐藤昭夫先生をはじめ、来賓の方々も、参加を拒否する。そのような状況の中で大会が開かれました。

 特に機動隊の導入について、われわれは労働運動史上例のない暴挙だと思っています。もっと言えば、労働組合としての死を意味するような行為です。
 例えば日教組も大会に機動隊を導入する。これも私はいいことだとは思いませんが、建前としては右翼の妨害に対する導入です。しかも今度の国労大会は、「4党合意」を認めるかどうかという、国労という労働組合のなかの路線をめぐる対立に対して機動隊を導入した。明確に解雇撤回まで闘い続けようと訴える組合員に対して機動隊を差し向けたということです。
 こんなことは国鉄労働運動の歴史上全く例のないことです。その意味では労働組合の変質の決定的な段階だというしかありません。これに心から弾劾の声をあげていかなければならないと思います。

(2)闘争団の声明と本部・東京地本見解

 これに対して国労の闘争団の仲間たちは、20闘争団プラス6闘争団の有志という形で、国労大会の前段や当日に記者会見を行って、「国労本部がどのような方針を決定しようが、自分達はあくまでもJRと政府の責任を追及して、解雇撤回まで闘い抜く」という声明を発しています。そして各闘争団ごとにそれぞれ「われわれは断固闘いの道を貫く。ぜひ支援をしてほしい」という声明文などを発表しました。また、闘争団の仲間たちは、「解雇撤回・地元JR復帰を闘う闘争団有志」という闘争組織を立ち上げました。

 一方、国労本部はこれに対して大会後、「一部闘争団員の阻害行動への対応について」という指示文書を出しています。この大会の直前まで反対派でありながら大会直前に賛成派にひっくり返った東京地本からも同様の指示文書が出されました。「闘争団有志などという団体は国労とは関係ない団体である。これが呼びかける行動には一切参加するな」という内容です。
 場合によっては国労本部が闘う闘争団を先頭にした国労組合員に対して統制処分を行うところまで発展する可能性をはらんだ対立が生まれているのが現状です。

(3)その他1047名闘争をめぐる動向

 さらにこの1047名闘争をめぐるそのほかの動向について、報告しておきます。
 一つは、政府やJRの動きです。国土交通省、旧運輸省の事務次官が、この国労の決定にどう対応するのかという記者からの質問に対して答えていますが、「これは8ヶ月も前の話ですから、あとは対応待ちです。4党といっても今はもう変わっています。自民党さんがどうするかということでしょう」と、完全にさめた形で見ている状況です。
 もう一方、共産党が「赤旗」ですぐに、見解を発表しました。この国労大会に対する評価として、「採用問題をはじめ、切実な要求の実現をめざして、団結の方向性を示したものといえる」という見解です。共産党はついに国労本部の「4党合意」推進、機動隊を導入して闘争団を切り捨てていくという方向に対して賛成表明をしました。
 それに対して闘う側は、国労の中でも千葉地本、高崎地本、水戸地本の関東3地本は国労本部に対し、機動隊導入に対する抗議の申し入れをしています。東京清掃労組も機動隊の導入について国労本部に対して抗議の声明を発している。国鉄闘争を支援してきた様々な勢力が、新しい支援陣形を構築しようと相談し、動き出しています。

4)改めて4党合意の本質について

 「JR完全民営化」と4党合意

 「4党合意」を通すために1000名の機動隊を導入して、一切シャットアウトする。こういうやり方にこそ「4党合意」の本質が現れていると思います。1047名闘争は、分割・民営化攻撃に対する本質的な異議申し立てです。ここにこの闘いの本質があります。

 政府は2月下旬に、JR東日本、西日本、東海三社の完全民営化のための法案を提出し、6月にこの法案を通過させるとしています。形態としてはJR会社法を改正し、本州三社の株式を全部売却して完全な民営会社にし、国鉄分割・民営化の最終的な成功をうたいあげるということです。
 そう考えると、完全民営化を前に、1047名闘争という形で国鉄分割・民営化の異議申し立ての闘いがいまも続いているということは、彼らにとっては絶対に認めることができない。そこを見据えて1047名闘争を潰すために仕組まれた攻撃が「4党合意」だったわけです。

 しかも国鉄分割・民営化から開始された規制緩和、構造改革路線を徹底的に労働者に強制していくというのが、現在、資本の生き残りをかけた唯一の方策となっています。
 そのとき、「国鉄分割・民営化はまだいっぱい問題を抱えている」という状況をこれ以上許しておくことはできない。この10年あまり、「国鉄方式」と呼ばれる首切りが横行していますが、さらにこの道を突き進もうというのが資本の側の構えです。そのためには1047名闘争を徹底的に潰しきらなければならない。第2の分割・民営化攻撃と言ってもいいと思いますが、結局それが「4党合意」という攻撃の本質です。

 その攻撃の大変な圧力に屈服したのが、「4党合意」承認ということを掲げて登場した国労本部を中心としたグループです。それに対して闘争団を先頭に真っ向から立ち向かっていますが、むこう側には政府・運輸省(国土交通省)、それに屈した国労内の承認派の勢力という関係で闘われている。
 国鉄闘争というのは戦後労働運動の中心的な存在だった。だから多くの労働者が心から支援してくれるという関係も存在してきた。「国労は闘う労働組合である」と多くが思って、また国労も一応そのように存在してきた。しかしそれが根本から変質しようとしています。労働運動の歴史の中でわれわれが様々な場面で経験してくやしい思いをしてきた道を、国労もまた歩もうとしている。

 労働運動の基本的な構え、そして変質

 こうした事態は、労働運動のあり方そのものが問うものです。1047名闘争をめぐって起きている事態を、そういうものとして見なければいけないと思います。
 どこに原因があったのかは、時間がありませんので触れることができませんが、一つだけ振り返ってみると、国鉄分割・民営化攻撃は中曽根による戦後政治の総決算攻撃の中心をなす攻撃として襲いかかってきたわけです。労働運動から見れば政府・資本の側の労働政策が根本から変わっていく、つまり総評を解体し連合化していくという労働運動全体に対する大きな転換点だった。
 しかし国労は当時からこの攻撃をそういうものとして真正面から見据えることが出来なかった。それでもなおかつ闘う労働組合としてまがりなりにも存在してきたのは、現場の怒りの声につき動かされた結果だったと思います。大胆な妥協をするという本部方針を覆した修善寺大会がそうです。

 この10何年間、国労が闘う労働組合であるという形を作ってきたのは、闘争団の仲間たちが必死になってがんばってきたからです。だけどそれに応えるような方針が国労本部から出たことは一度もなかった。結局、第二の分割・民営化的攻撃が始まるという状況のなかで、このような関係でやってきた本質が全部露わになった。つまりボロが隠せなくなったという状況だろうと思います。
 どんなに厳しくとも、あくまでも労働者の力に依拠し、その団結の力を信じて、そこから闘いの方針を導き出して行く、国労本部にはそうした立場は一貫としてありませんでした。
 闘い続けようという組合員が多くいるにも関わらず、なんで政府・自民党に依拠して自分達の組合員に依拠しないのか。ここでは180度考え方がひっくり返ってしまっているわけです。

 大会の前、国労本部は「統一と団結を守るために」ということを、ことあるたびに口にしていました。しかしそれはふたを開けてみれば、それは1000名の機動隊を闘争団の仲間たちに差し向ける行為だった。こうした攻防の焦点においては、原則を一歩踏み外すとそこまで行き着いてしまう。われわれも労働運動を進めるにあたって、そういうことを心しなければいけない。労働運動の原則というのは、そういうものとして本当に守りきらなければいけないと強く感じています。

(5)闘いの課題について

 1047名闘争のこれからの課題について、いくつか触れておきたいと思います。
 「4党合意」をめぐる攻防戦、あるいは国鉄闘争を支援していただいた多くの労働者に波紋を広げた分岐は、今まで話してきたようにますます非和解的な関係に入ったと見る必要があるだろうと思います。
 例えば「4党合意」を決めたとたんに国労に対して「裁判を取り下げろ」「闘争団を黙らせろ」「全労協から脱退しろ」というさらなる屈服の強要がこないはずはない。こういう形で労働運動全体に波紋を広げて、分岐を広げていく。

 こうした攻防戦をわれわれは全力を挙げて貫かなければいけないと思います。ここで本当に怒りの声を結集しきる。労働運動全体の流動化を闘う側からつくっていくということをやりきらなければいけない。国鉄闘争は全国の支援の仲間たちが注目する闘いであり、あるいは敵の攻撃としてもきわめて戦略的な攻撃であるだけに、この攻防をかちきったときには労働運動の再生に結実させることが必ず出来ます。闘争団の仲間たちとともに、それをやっていかなければいけないと思っています。

 直ちにやらなければいけないことは、全国から機動隊導入への怒りの声を挙げることです。国労の中では、各地本の大会、エリア大会が次々に開かれる。ここで怒りの声を挙げなければいけない。そして8月には全国大会を迎える。ここに向けて、「こんなことが労働組合のあり方としていいのか」という怒りの声を挙げなければいけないと考えています。

 闘争団の飛躍−新たな闘いの陣形

 われわれも1047名の一員という立場から話をさせてもらうとすれば、闘争団自身も飛躍をしなければいけないと考えています。闘争団は「国労本部がどんな方針を決めようが、自分達はあくまでもJRの責任を追及して闘う」という声明を出しています。その心意気はすばらしいですし、われわれもともに闘うつもりです。しかし自分達のことを言うだけでは済まない関係に入っているということも、見ておかなければならないと思います。
 私たち闘争団の闘いというのは、「どんな方針が出ても自分達は闘う」というだけではなく、自分達の闘いに勝利するためには、自分達が闘う労働運動のオルグ団となって、JR以外の全国の労働者に訴えて歩かなければいけない。自分達の手でそういった力を組織しなければいけない。あるいは誤った方針に転落した国労本部を変えなければいけない。そういう飛躍が求められていると思います。
 「4党合意」については、一票投票が行われたわけです。例えば北海道の闘争団は必死になってがんばっている。涙ぐましいまでがんばっているにもかかわらず、一票投票の時に北海道の各職場に入って「これにバツをつけてほしい」というオルグをしていないんです。

 これからの闘いは、1047名の闘争団が、闘う労働運動のオルグ団となって全国を席巻をするというところに飛躍をしなければ、勝負にならないのではないかと思います。私たちも微力ながら先頭に立つ決意ですし、そういうことを国労の仲間たちとともにつくっていきたい。そして新しい国鉄闘争の支援陣形をつくるのも、全国の仲間たちがつくってくれるのではなくて、自分達の手で心から訴えて作り上げなければいけないということだと思います。

 4党合意撤回地労委闘争の重要性

 こうした情勢の中で、全国の国労の仲間たちと私たち動労千葉が申し立てている労働委員会闘争、「4党合意」そのものを不当労働行為として、政府・自民党、運輸省、JRなどに「4党合意」撤回を求めるこの闘いの持つ位置が決定的に大きくなったと考えています。

 「4党合意」に書かれているのは、要するにJRに法的責任がないことを認めて訴訟や労働委員会闘争を取り下げろということです。裁判の取り下げや、あるいはその前に闘争団が国労本部の方針に反して闘っていることを押さえつけるということが必ず出てくる。
 統制処分、裁判の取り下げ、全労協からの脱退、こう見たときに、この地労委闘争に全国の労働者をどれだけ結集していけるのか、闘争団がどれだけこの闘いの先頭に立てるのかということが決定的な位置を持つようになるのではないかと考えています。こうした大きな分岐にあたって、私たちは全力で闘っていきたいと考えています。

3.JR総連をめぐる革マルの対立・抗争・分裂

(1)「完全民営化」を前にした「革マル問題」の清算とJR総連革マルの全面的屈服

 国鉄分割・民営化以来、国鉄労働者に対して徹底的な差別・選別攻撃を加え、不当労働行為を行い、解雇し、あらゆる合理化を認めて大変な労働強化の中に放り込んでいくという構造は、すべてJRとJR総連との結託体制という大きな労務政策の枠組みの中で行われてきました。その結託体制の一方のJR総連が今、組織崩壊の危機にたっています。

 ご存じの通り、JR総連九州労の8割、革マルの中心メンバーを先頭にして集団脱退をするという事態が起きました。あるいは東日本を巡っては、坂入という、JR総連の中では革マルのナンバー2だった人間が革マルに拉致される。それに対してJR総連は革マルを告訴する。こんな異様な事態が始まっています。

 革マル派本体とJR総連革マルが全面的な対立状況に入った。この本質はなんなのかということです。政府は完全民営化を前に1047名問題の決着と同時に、もう一つ整理しなければいけない問題として、JR総連革マルとJRの異様な労使関係を清算するということに手を着けはじめたと考えています。
 だからこの1、2年の間、JR資本や権力側からJR総連の幹部に対して、「革マルと根本的に手を切れ」という要求が突きつけられ、JR総連革マルは、松崎を先頭にそれに全面的に屈服したというのが現状でしょう。そうした状況の中でJR総連の組織崩壊的な危機が始まっている。

(2)国鉄・分割民営化以降の労務政策の破綻

 これは資本の側から見れば、分割・民営化以来の労務政策が完全に破産したということになります。
 今、国労本部が考えているのは、「1047名を切り捨てて連合に合流する方向でいけば、権力が革マルを切り捨てて、もう一度自分達をちやほやしてくれるのではないか」ということです。だから1047名がどんなに叫ぼうと、鉄面皮のような顔をして無視している。JR連合にいくということに踏み切っている。
 しかしそんな単純なものではない。いまの権力・資本はいくら屈服しようと国労なんか相手にしようとは考えていない。JR総連革マルに屈服を迫り、より一層資本の忠実な奴隷にしようとしているこの間の動きは、そのことをはっきり示していると思います。

(3)JRをめぐる労働戦線の再編−新たな戦国時代への突入

 国労という組織は、ある種のどん詰まりに来ている。JR総連の革マル支配も完全に破産しました。これはJR戦線をめぐって、労働運動をめぐる新たな戦国時代のような状況が始まろうとしていることを示しています。こうした状況のなかから闘う国鉄労働運動をもう一度作り直していく展望が大きく生まれていると私たちは見ています。
 動労千葉にもJR総連からの加入が始まっています。1月1日のことですが、松崎から「本部の専従執行委員になれ」とオルグされていたような若手の活動家が動労千葉に結集するという状況も生まれている。
 10数年を経て、コンクリートの壁のように見えていた労務政策に、ひびが入って崩れ去ろうとしている。国労本部に言いたいのは、なんでこんな絶好のチャンスに屈服しなければいけないんだということです。

4.大資本攻勢と「第二の分割・民営化」攻撃の開始

 時間がなくなってしまいましたが、JRをめぐって第2の分割・民営化というべき攻撃が始まっています。
 これも完全民営化という形で、政府の規制から完全に外れるということを前提に始まっているわけですが、JR東日本は国際会計基準の導入、グローバル化、市場原理などを口実にして、今までの鉄道会社のあり方を抜本的に変えていくという5年計画(ニューフロンティア21)を出しました。JR東日本は、この過程で1万人を要員削減し、賃金や雇用形態も全般的に見直すとしています。

 実を言うと、JRに働く労働者は、国鉄分割・民営化の過程で約半分に削減されました。
 東日本は8万余という数で発足して、いまJR東日本の鉄道部門で働いている人は5万4千人です。つまり国鉄当時の4分の1から3分の1になっている。それをさらに1万人削減する。そのために電車や線路、電力、信号通信等の保守部門を全面的に外注化し、何年か後には、そこで働く労働者は転籍してしまおうという攻撃です。
 JR総連はこの攻撃を承認して、積極的に推進するという立場です。今、JR総連は生き残るためには一切会社に逆らわないという関係に入っています。

 さらにもうひとつの問題が「シニア制度」です。年金制度の改悪によってこの4月以降、60歳では満額年金が支払われなくなるという状況の中で、各組合の今春闘の一番の焦点は定年延長雇用延長問題です。
 JR東日本の「シニア制度」に、60歳以降の雇用延長を関連会社での新規採用として採用試験を行う。採用試験に受かった者だけが雇用される。つまり国鉄分割・民営化と同じやり方です。採用試験は関連会社がやるからJRは関係ない。しかも再雇用賃金は千葉の水準でも13万〜14万円です。
 60歳のベテラン労働者をこれほどの低賃金で使う。採用試験方式というのは、これまで雇用延長制度を導入した企業はどこもとっていません。

 しかも業務の全面外注化を労働組合が推進するということが協定上ワンセットになっています。さらに、この協定を締結しない組合に所属する者は、そもそも再雇用の制度の適用から排除するというのです。
 今、労働委員会闘争を始めていますが、高齢者を徹底的に低賃金労働者として活用し、総額人件費を抑制するというやり方で日経連路線を突き進もうとしています。

5.2001年春闘とわれわれの闘い

 我々はこうした攻撃に対して、1047名闘争を中心に全力で立ち向かわなければいけないと考えています。そうしたことも含めて、われわれは社会のあり方そのものを問うという立場に立った労働運動を進めたいと思っています。労働者の階級的な団結をどこまで広げていけるのか、そういう努力を全力を挙げてやっていきたいと思います。

 動労千葉としては、三大闘争方針ということを掲げました。
 1047名の解雇撤回闘争、第二の分割・民営化攻撃というべき大合理化の中心をなす定年延長問題と業務の全面的な外注化阻止、そしてJR総連解体−組織拡大、この三つの闘争課題を掲げて、組織を挙げてストライキをはじめとした闘いを展開する。その中で本格的にJR総連を解体して、少なくとも千葉の運転職場の最大多数派に動労千葉が飛躍していく、そういう年にするという方針を掲げています。
 これをもって全国にもう一度闘う国鉄労働運動を甦らせようという訴えを発する。そういう闘いをこの春闘時期から開始していきたいと考えています。

 以上、私たち動労千葉の考え方をお話しさせていただいて、報告に代えさせていただきます。どうもありがとうございました。

たたかう労組ネットワーク DORO-CHIBA